非常食というと、カンパンやアルファ化米などを思い浮かべるケースが多いが、非常時だからこそ、食べ慣れたものを食べたいという欲求もあるだろう。そんな要望に応える製品が各社から販売されている。
「ビスコ 保存缶」や「リッツ 保存缶」などは、普段から食べ慣れているスナックやお菓子を長期保存可能にしたパッケージで、製造日から5年ほどの保存期間を持つ。プルトップの缶に封入されているので湿気などにも強く、水害や持ち出した先での大雨などに遭っても水濡れなどの被害を受けにくい。また、中身を取り出して食べ終わった後の缶は、防災スタイルでも紹介している非常食(アルファ化米やレトルト食品)を調理したり、ビニール袋での炊飯などを行う際のお湯を沸かす調理器具、水をくんだり炊き出しの料理を受け取るなどの容器などとしても再利用できる。
もちろん、専用のクッカーなどを持ち出せていれば問題ないかもしれないが、周到に準備をしていたとしても避難中に失われたり、持ち出せなくて結果的にこの缶が唯一の金属容器という可能性もある。そのようなケースも想定して、金属容器を利用した保存食料というのも幾つか備蓄しておくと良いだろう。
複数の非常食を持ち出せた場合、手元に備蓄がある場合、食べる順番としてはこれら保存缶入りの食料を最初に食べるケースが多くなると思う。
災害直後は、ガス管などが破損している可能性を考慮して、安全が確認されるまで火を使用するのを控えた方が良いというケースもある。また、避難直後は心身ともに疲労していて、調理の手間を省いてとにかく何か口に入れたい、という場合もあるだろう。
そのような理由でまず、缶入り食料を食べた後、その容器を利用して暖かい食事を用意する事もできるので、一石二鳥と言える。
同様の理由で、カップ麺の保存缶を備蓄しておくのも有効だ。保存用の缶がそのままお湯を沸かすための鍋として使える上、必要な容器、食器も封入されているので、お湯さえあれば食べることができる。残念ながら、ビスコなどはそれなりにかさばる容器に5枚×6パックと容器の割には封入量は多くない。本格的な食料は別途用意するとして、すぐに食べられるファーストレスポンス用の非常食として、また、食器や調理器具に転用できる缶を備えておくという意味で備蓄に加えておくと良いだろう。
これら缶入りの非常食に関しては、それほど多くの備蓄は必要ないだろう。もちろん、非常用の備蓄食料を全てこのようなもので賄いたいという場合にはそれでも良いが、コストパフォーマンスが良くないので、長期保存可能で調理用に転用できる容器という意味で数個(例えば、ビスコ、リッツ、カップヌードル、チキンラーメンを1缶づつなど)揃えておき、残りはアルファ化米などの軽量、コンパクトな非常食だったり、長期化する場合には米を炊いたり乾麺をゆでたり、など通常の備蓄を活用するほうが現実的だ。
また、非常食では栄養のバランスがとりにくいという事で、カゴメの「野菜一日これ一本」の缶を備蓄に加えておく事をおススメする。非常用ではなく、通常販売用の缶飲料だが、3年半の長期保存が可能で、常に買い置きして消費してゆくローリングストックにも向いている。一缶で一日分の野菜を摂取できる計算なので、一人暮らしで忙しい人には、野菜不足を補う意味でもおススメしたい。